二月十日、長い長い稽古を経て遂にミュージカル『マルグリット』の幕が開きました。
九日夜半迄、最後の舞台稽古が大勢の関係者の見守る中続けられ、翌十日の初日は又夜七時の開演迄たっぷりと手直しの為の稽古。
イギリス人(ことに演出家のジョナサン・ケント)の何と粘り強いことか。
全ての稽古を終え、いよいよ開演十分前、ジョナサンの檄(ゲキ)が飛んだ。
「私が今迄、色々な国でつくってきたカンパニーの中で最高のメンバーだ! 素晴らしい完成度の高い作品になったが、一つだけ足りないものがある。それは、観客だ。客の前で演じることで稽古のエネルギーは更に倍加して、ステージと客席が一体となり充実した二時間半を体感するだろう。さあ、舞台を楽しんでおいで!!」
どうです、憎いエールじゃないですか。
勿論我々はお客に最高のプレゼントを渡しましたよ。
これ迄私は客席からミュージカルを観る度に何度も何度も繰り返されるカーテンコールの拍手の中で
「羨ましいナ、コイツら!」
と出演者を羨んでいたネ。
それが今回は、私が羨ましがられる立場になったわけでネ。演出上予定していた以上の回数、ドン帳が上がり、皆さんに頭(コウベ)をたれ、拍手を受ける中、私も本格ミュージカルデビューを果たしたんだと実感しました。
というのも、実は十年前、オフオフ・ブロードウェイの大ヒット作『ファンタスティックス』というミュージカルに出演したことがあるのです。
登場人物ば七人で、演奏はピアノとハーブの二人だけ。林隆三さんとダブルキャストでエル・ガヨという主人公を演じ歌ったのですが、手づくりの小品でとても楽しかった想い出です。そして今回――。
初日のドン帳が降りて夜半の十時過ぎから赤坂ACTシアターのロビーで催された初日パーティは壮観でしたネ。
マルグリットのロンドン版の制作スポンサーで大金持の夫妻はじめ、演出家のジョナサン・ケント。『ミス・サイゴン』、『レ・ミゼラブル』の共同脚本家、アラン・ブーブリル夫妻とクロード=ミッシェル・シェーンベルク夫妻。
音楽監督のショーン・オルダーキング。美術デザインのポール・ブラウン。
振付、ステージングのニッキ・ウーラストン。衣装主任のレイチェル・デイクソン。音響デザインのポール・グルースィス。
他にも言葉も交わした事のないイギリス人スタッフや奥様連中が十数人、日本人関係者の集団に混じって楽しげに語らっている。国際色豊かな初日パーティでしたネ。
照れ臭かったけど、彼等一人ひとりに自分のカレンダーやらグッズを日本みやげとしてプレゼントしたんだけど、これが大受けでネ。とても喜んでくれた。
今頃、ロンドンで私のカレンダーを眺めながら日本を懐かしがっているかもネ。
さて、初日の幕が開いて何日か経ったわけだが、舞台って慣れてくると手抜きしたり、ダレたりする場合があるけど、この『マルグリット』はと言うと、益々エンジン全開で完成度が高まる一方です。
ヒロインの春野さん、相手役の田代君も今や絶好調。それにクラシック畑の歌唱は苦手だと言っていた寺脇さんも、今や自分の持ち味を発揮しながら見事に歌いあげている。私も乗り遅れない様に頑張らないとネ。
全てコンピューターで作動する舞台装置、証明、映像、衣装、もちろんミシェル・ルグランの音楽の美しさ。日本側のスタッフ、キャスト、オーケストラ。どれをとっても文句のつけ様のないと思うネ。
赤坂ACTシアターで十八日迄公演した後、大阪梅田芸術劇場、東京日比谷日生劇場と劇場は移動するけど三月二十九日迄公演は続くので是非足を運んで欲しいナ。
私の言ってる事を成程と実感して貰える筈だから。
では又近々公演の様子等お知らせします。
[E:camera]写真は赤坂ACTシアター初日公演の模様です。 撮影/桑原 靖
