7月1日午後11時50分。私の出演シーンが全て終了。前半のシーンがだいぶ手間どり遅れが出た為、私の前のシーン、妻夫木君と小栗君の二人の場は翌日の撮影に廻されたのです。
それでどうにか我々のシーン撮影となったわけです。

中尾彬さん演じる毛利輝元と、その叔父にあたる後見人の小早川隆景を私が演じたのですが、私より一歳年下の中尾彬さんに「叔父上!」と呼ばれるのもいささか変な感じです
が、同じく一歳年下の松方弘樹さんに「お兄ちゃん!!」と呼ぶんだからネ。この世界じゃ当り前か。
さて、妻夫木聡君と北村一輝君を中尾彬演じる当主の毛利邸に招き、茶をすすめつつ相手の腹をさぐり合うのだが、翌日早朝熊本行という中尾氏は、11時を過ぎると途端に不機嫌になりイライラしはじめる様子に、相変わらずワガママ坊主がそのまま大人になった風情。
吹き出しそうになるのを我慢して大変だったナ
こうして私と彬氏との二人の低音の中で撮影も無事終了。するとスタジオ内の照明が微妙に暗くなり、そうそう私はこれでクランクアップ。三話分しか出演しなかったが、皆で「お疲れ様!!」のセレモニーをしてくれるんだナ、『風林火山』の時もそうだったし。
案の定花束贈呈と、フロアディレクターの声高な紹介で「本日横内正さん○十○歳の誕生日をお迎えになりましたぁ~ッ」大発声
妻夫木君から「愛」の天地人(兼続)のシンボルマークのラベル入りの特注一升瓶がプレゼントされました。

7月2日の午前○時になる直前にすべり込みセーフの「ハッピーバースデー」
事務所スタッフとスタジオ入りの前に、可愛いケーキ
を皆で分け合って食べながらの誕生会だったんだけど、こうして又皆で祝って貰い、この年になって今更!と思ってはいてもやはり嬉しいものでしたネ。
どうも皆さん有難う
そうそう私の生徒の志村君と野沢君も私の大好物のワイン
(ロゼシャンパンと白ワイン)
少ないお小遣いからプレゼントしてくれて有難う。嬉しかったよ。
北村君も前日自宅宴会で盛り上がった様だし、妻夫木君も酒が好きそう!
「彬」チャンは大病患った後なので用心してるだろうが、又一度皆と世代を超えて飲みたいナ
その彬チャン。
「俺は自分のことしか考えない男だョ」と露悪振った言い方をするけどね、そんな彼との出会いはお互い二十二、三歳の未だ夢中で芝居の勉強をしてた頃。
私は六本木にある『劇団俳優座』の研究生。彼は青山にある『劇団民芸』のこれ又研究生。
当時、渋谷駅の原宿側のガード下にあった『とん平』という古い古い老舗の飲み屋が私たちが一番ゼイタクに飲める場所。
『サンマの塩焼』に『湯豆腐』、それに二級酒の『関』のお銚子
が三本。威勢のいい大の釣好きのおかみさん相手に夢中で芝居の話を聞いて貰うのが無常の喜び
。
そんなカウンターの端は、何か気になる奴だナと見ると、相手もギロッとこちらに「ガン」を飛ばしてくる。「俺は中尾彬だあッ!」ってね。
お互い芝居をかじる者どおしの、自意識過剰、気障、ナルシスト、生意気が洋服(ロクなものは着てなかったが)着て歩いてる様なものだったネ。
そんな相手にきっと自分を感じたんだろうナ。以来、四十何年の長~いつき合いです。
一時、湯島のいきつけ「不多川」という酒亭でよく会いましたネ。
もともと「不多川」は湯島という土地柄もあり、芸者さんや落語界では師匠と呼ばれる皆さんがひいきにしてたところ。
私は友人に誘われて通い出したのだが、もともと池波志乃さんの御尊父、馬生師匠が常連だった縁で中尾彬さんも志乃さんとのデートにつかってた店だって!
或る日、一人で飲んでいるところへ中尾夫妻がやって来て、私に気を使ったのか夫人の池波志乃ちゃんを真中にハサンでの飲み会となりました。
ワイワイやってるうちに突然、志乃夫人が「お願い!もう止めてェーッ!!」と叫びましたネ。
ええッと見るとゲラゲラ笑いながら
「だって、右と左と両方から同じ様な低い声で話されたら、ステレオでどっちが彬でどっちが横サンかわからなくなるウーッ」
だって
店中大爆笑でしたネ。
以来、私の声と彬に似てるという奴が多いけど、私は「俺は奴みたいに地獄の声みたいに低いだけじゃないぞ! 裏声も出せるし、もっと低音だって出るぞー!」と声を大にして主張しますがネ。
皆さん どう思われるかナ?
では又。