横内:「今までに三田さんは女優としてどれぐらいの職業をおやりになりましたか(笑)?女医から、弁護士から、検事から、もうあらゆるね」
三田:「あらゆる」
横内:「野口英世のお母さんから」
三田:「そういう世に語られている偉人、実在した人もやりましたね」
横内:「それで、僕がいつも思うのは、女優もスターもそうなんだけども、たいてい皆さん自分のキャラクターの中に、こう引きずり込んできて、自分のキャラクターだけで表現をする人が多いのよ。だけど、三田さんっていうのはね、役を演じるんだ。役を演じるから、その都度いろんな顔が見られるのよ」
三田:「そして、その都度苦しむのね。そう言えば私、『遠き落日』やったときにね、ほら、サンコンさんっていう方とお会いして、彼は私のことをよく知らないと思いますが、映画を観てね、『三田さんは日本の女優さんっていうよりも、欧米の女優さんと同じようなものを感じました』って。デ・ニーロなんか、友達なんですって、サンコンさん。で、『デ・ニーロなんかと同じだ』って言ってくれたのよ。
横内:「すごいな、それは」
三田:「そのときは、全然よくわからなかったんだけど、後でね、そんなすごいことを言ってくれたんだなと」
横内:「ちゃんと見る人はそうやってね
三田:「自分をそっちへ近づける方向ね」
横内:「そうなんですよ」
三田:「スターの自分がいて、役がこっちに来るんだっていうんじゃなくてね。自分はボロボロになっちゃって、太ろうが何しようが、自分の皮膚忘れちゃったくらいよ、おばあさんになりたくて。気がついたときには、『三田さん、皮膚、大丈夫ですか?って』って言われるほど、皺しわになっちゃった」
横内:「確かに、作る工程の中では、そういういろんな試行錯誤があるかもしれないけど、仕上がったものを観ていると、三田さんは本当に毎回違った顔を見せてくれるから凄い」
三田:「多分、嫌いじゃないんでしょうね。ものを作っていく、そのクリエイティブな気持ち、それは嫌いじゃない。だから、入っていったときは、もう、底なし沼に入っていくように、どんどん、どんどん潜っていっちゃうんですよね」
横内:「じゃあ、『毒マグロ貴婦人』は合っていたんだ(笑)」
三田:「そうね(笑)。あのときも深海に入っちゃって、メイクさんが驚くほど、最後はすごい顔になっちゃった」
横内:「あれ、どのくらいつけていたの?」
三田:「早変わりじゃなければね、もっとやったんだけど、顔は描いたんです」
横内:「描いたの?」
三田:「描いて、その後、ものすごいのを貼るんですよ。あれでも、最初はもっとおとなしかったのよ(笑)。それがどんどん激しくなっていって、メイクさんに『三田さん、初めのでいいですから!』って。でも、私は『いや、だって、こういう役だから、こんなおとなしいことしてると、お客さんは満足しないんじゃない?』みたいなね。もう『ヒャ~!』って言うぐらい」
横内:「ジョーズじゃないけれども、マグロがワーッて口開けた状態で、歯がギザギザになっている、その中に三田さんの顔があるわけだ(笑)。なんかさあ、楽しんでるなと思いましたよ。逆に言うと、三田さんはこれだけはやりたくないといったものはあるの?」

三田:「そんなの考えたことない。考えたらね、『印獣』はできなかった。何も知らないからやらざるを得なかったんです。宮藤官九郎さんが『九歳ぐらいはやっていただくかな』ってボソッと言ったとき、『えっ?九歳ですか』って、『「それは事件ですね』って言ったんだけどね、その先があそこまでいくとは......。
横内:「三田さんと僕の違いはそこだよね。結局、三田さんっていうのは、なんでもそうやって消化するんだ。僕は、『俺、これはできない。あれもできない。いやいや、だめ』っていう消去法。三田さんを見習わなきゃいけないなあと思いますよ。
じつは去年の三月、僕、初めてオーディションをまともに受けたのよ。ロンドンの『シェルブールの雨傘』のスタッフがやった『マルグリッド』っていうミュージカルだったんだけど、この年でオーディションやらされたんですよ」
三田:「よくやりましたね」
横内:「よくやりました(笑)。僕の人生にとってはそれはすごく画期的なことだったんだけど、三田さんの話を聞いていると、僕のなんかもう、本当取るに足らない」
三田:「いえいえ、私、オーディションとかできないですよ」
横内:「だから、そういうふうなものが今までネックになって、なかなか自分の新しい部分を開拓できなかったけど、三田さんは今回の『印獣』のようなものをね、『三田さんいかがでしょう?』なんて、『三田さんだったら、おもしろいかもしれない』なんていう発想の中で。官九郎さんや古田さんらとのコンタクトの中で一つの作品を仕上げていく。もう、あれをやっちゃったら、怖いものなしだもんな(笑)」
三田:「彼らのような世代に感じるのは、やっぱり『生だな』ってことよね。一番最前線ですから、私たちにもそれはあったわけで。そこを通り超えてきた人間が、もう一度、そういう生々しい人たちとね、対等に仕事していく、っていう。しかも、私は偉い人として出るんじゃなくてね、対等に、涙を流して格闘して。『結局は三田さんがさらっていくんだ』なんて言われながらも、そんなことはないんですよ。だけど、そうおっしゃっていただけるくらい、本当に一緒に戦うっていうのは、私としてはありがたいし、うれしいし、苦しいけど、楽しい、と」
対談は明日に続きます!!
ヨコ様がアーネスト・ヘミングウェイ役で出演する舞台
『ディートリッヒ~生きた 愛した 永遠に』
東京公演は3月12日(金)~3月28日(日)まで、青山劇場にて、
大阪公演は4月3日(土)と4日(日)、梅田芸術劇場メインホールにての上演されます。
詳しくは公式HP:http://www.dietrich.jp/
