――舞台『印獣』のクライマックスシーンで、娘の仇を前に復讐心を露わにする自称「大女優」役の三田佳子さんに、ルポライター役の古田新太さんが罵声を浴びせる。
「結局、あんたは女優としても、母親としても中途半端だったんだ!」
おそらく観客は、この10数年、世間から〝ダメ母〟のレッテルを貼られてきた三田さんと舞台上の大女優をダブらせただろう。そして三田さん自身、その自覚があるからこそ「役者として立ち向かった」――。

横内:「あの台詞の後に、あなたは正面を向いてニタって笑う」
三田:「それは、私がこうやってこの芝居をやっているってことは、役者としても母親としても前に向かって歩み続けているということでもあるから。だから受けて立てたのね」
横内:「強いなあ!」
三田:「そんなことないのよ。だけど、ご存じのように、祐也のことではたくさん辛い思いをしたし。苦しいことも、病気をしても、人間ってこんなふうにできるんだとかね。苦しくても痛くても、こんなふうにやれるんだなって思ったんですよ。そう、10数年前ね、どうにも行き場がなくて、シャワー浴びながら泣いたことあるんです。シャワーの音で自分の声が聞こえなくて、泣いても水と一緒に流れちゃうでしょう。そういう、とんでもないことをするのね。こんな悲しいときに、絵にすると、とても馬鹿げたようなことを必死でやっているっていうのはね、それは人間の愛しさであり、滑稽であり、馬鹿でもあり、利口でもあり、いろんなものとして見えてくるから、どんなこともね。
当時はフラッシュの色も違って見えた......。それまで女優としてたくさんフラッシュを浴びてきたけれど、いわゆる一人の人間として、何か付き刺さってくるようなフラッシュを浴びることもあるんだなあって。生まれて初めての経験でした」
横内:「あれから十年、祐也さんとの関係はどうですか?」
三田:「その都度、対峙してね。親ですから、傍観はできないでしょ? お腹を痛めて、この世に生んだわけですから。ただ、もう子どもではないのでね、彼も今、自分の人生を生きようとしています」
――祐也氏(30)といえば、今年2月、一般女性(26)と入籍。覚せい剤取締法違反の刑期を終えた息子が、人生の伴侶を得て、新しい人生に旅立つと決意したことに、三田佳子さんも喜びを隠せない――
横内:「おめでとうございます! もうすぐお孫さんの顔も見られるかな(笑)?」
三田:「ありがとうございます」
横内:「三田さんにはどんなふうに報告してきたの?」
三田:「結婚についてはごく最近、本人が決意したようですね。彼も前に一歩踏み出そうとしているんだなと思ったし、そういう方と巡り合えたのも運命ですから、親としてはとても喜ばしいことですよね」
横内:「お相手の女性はどんな方なんですか?」
三田:「とってもきれいな大きな目が印象的で健康的な方よ。あちらのご両親とも会いましたけど、二人共大人ですから、本人同士が決めたのであればそれがいちばん、と。私たちも、彼が自分を見失わず、責任を持とうという姿勢は喜んであげたいと思っています。あと、だいぶ前から計画していたことですが、親しい友人たちと資金を持ち寄って会社を立ち上げて。この数カ月は寝る時間も惜しんで働いています」
横内:「それは良いことが続いているじゃないですか」
三田:「成功する保証はないけれど、『やらなければ何も始まらないんだ!』と本人も懸命に働いているようです。彼自身、自分には起業しかないと思ってずいぶん勉強もしたようですよ。それに、もしうまくいかないことがあっても、そこから学ぶことも必ずあるでしょう」
横内:「施設を出てもなかなか自立できない人が多いと聞くけど、よく決意しましたね」
三田:「正直、今まで何度もやり直そうとしてきたわけですから、今回も絶対大丈夫とは言えません。それだけ難しい病気ですから。でも、依存症から回復ということでは、私たちもたくさん勉強しました。多くの方たちと関わりを持ち、勇気づけられもしたし、涙もいっぱい流したわ。自助グループのリーダーや仲間の皆さんにも大変お世話になりました。そうした方々の応援があって今があるのよね。今度も、万全とは言い切れるものではなくても、親は何歳になっても親だし。でも、これからは、彼ともいい距離感を保って、できるだけクールに接していきたいと思っているのよ」
横内:「それは同感だな。うちの子供たちもみんな成人しているんだけど、たとえ親と子でも、最終的には『人間対人間』という考え方なんですよ。あなたが、祐也さんと一人の大人として付き合っていくと決断されたのは、とても良かったと思います」
対談は明日に続きます!!
ヨコ様がアーネスト・ヘミングウェイ役で出演する舞台
『ディートリッヒ~生きた 愛した 永遠に』
東京公演は3月12日(金)~3月28日(日)まで、青山劇場にて、
大阪公演は4月3日(土)と4日(日)、梅田芸術劇場メインホールにての上演されます。
詳しくは公式HP:http://www.dietrich.jp/
